離婚の法律の改正 - 家事事件手続法

家事事件手続法の制定

家庭裁判所での夫婦、親子、相続、成年後見等にまつわる調停や審判の手続を定めた家事事件手続法(以下、新法といいます。)が、平成25年1月からスタートしました。

それまでは、家事審判法(以下、旧法といいます。)という戦後間もない昭和22年に制定された法律によっていましたが、昭和24年に現在の家庭裁判所が発足した後も、大きな改正はありませんでした。

旧法では、手続全体に裁判所の広範な裁量が認められていましたが、時代の移り変わりとともに、家族の問題をめぐる人々の意識や社会状況も大きく変わっています。権利意識の高まりとともに、当事者への手続保障にも十分に配慮し、利用しやすい制度とすることが求められていました。このような見地から、旧法を全面的に見直し、新たな法律が制定されることになったのです。

旧法からの変更点のポイントについて、離婚手続に関するものを中心にご説明します。

家事調停 裁判官1人と調停委員2人以上で構成される調停委員会が、当事者双方から言い分を十分に聴いて、話し合いによる自主的な解決を目指す手続です。

家事審判 裁判官が様々な資料に基づいて公権的な判断をする手続です。

 

1.管轄(かんかつ)- どこの裁判所で手続をするか

夫婦間の協力扶助、婚姻費用の分担、財産分与に関する処分の審判事件について、新法では相手方(他方配偶者)の住所地だけでなく、申立人の住所地の家庭裁判所にも管轄が認められました。当事者間の公平に配慮したもので、相手方の住所地が遠くの場合に、自分の住所地の裁判所に審判の申立てができます。

また、新たに双方の合意で定める家庭裁判所にも審判の申立てが可能になりました。

他方、調停については、旧法同様相手方の住所地か双方の合意で定める家庭裁判所のままです。

 

2.申立書のコピーの相手方への送付

審判や調停の申立ての際は、申立書を作成する必要があります。書式はお近くの家庭裁判所の窓口か、各地の裁判所のホームぺージからダウンロードできます。

旧法では申立書の写しを裁判所から相手方に郵送する規定はなく、調停手続きでも裁判所からは第1回期日の連絡の通知が来るだけでした。

新法では、相手方のある審判事件や調停事件では、裁判所は原則として申立書の写しを事件の相手方に送付しなければならないとされました。相手方としては、申立て内容を事前に検討し、準備をして期日に臨むことが可能になります。

申立書の書式では、当事者や未成年の子の住所氏名、求める内容(離婚か円満調整か、子の親権、面会交流、財産分与等)の結論と、理由の要旨だけを記載するようになっています。調停は訴訟と異なり一貫して当事者の話し合いに基づいて解決を目指す手続であるため、最初から詳しい事情を記載すると、紛争を助長し、円満な手続の進行を妨げかねないからです。

そのため双方の感情のもつれが激しい場合等は、裁判所は申立書を送付せず、申立ての事実と第1回期日の連絡にとどめる場合もあります。

 

3.当事者による裁判記録の閲覧・謄写(とうしゃ)

旧法では、当事者が記録の閲覧や謄写(コピー)を要請しても、家庭裁判所は「相当と認めるときに許可する」とされ、裁判所の広い裁量に委ねられていました。

新法では、審判事件では裁判所は当事者からの閲覧・謄写請求を原則として許可しなければならないとされました。

他方、調停事件ではこれまでどおり相当と認めるときに許可するにとどめられました。調停記録には家庭内の細部にわたる事柄や、高度なプライバシーに関係する事柄、他方当事者を非難する書面等が含まれていることが多く、閲覧謄写を自由に認めると円満な話し合いができなくなることを考慮したものです。

添付資料について

夫婦関係調整の調停では、申立書以外に次のような書類の提出が必要とされています(福岡家庭裁判所)。
・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
・事情説明書
・進行に関する連絡表
・連絡先の届出書
・年金分割についての情報通知書(年金分割についての話し合いをする場合)

事情説明書には調停の申立に至った経緯や、同居の状況、双方の経済状況、財産関係等を記載することとされ、進行に関する連絡表には相手方が調停に出席する可能性や、暴力を振るう可能性等を記載することとされています。事情説明書は相手方が閲覧・謄写申請を行えば、裁判所が相当と認めたときに許可される扱いです。

また、婚姻費用分担、養育費請求の調停に際しては、収入に関する資料(直近1年分の給与及び賞与明細書、源泉徴収票、確定申告書等)の写しの提出が必要とされ、これらは相手方に送付されます。双方当事者の所得資料を前提に協議がなされるためです。

なお、どうしても相手方に見られたくない書類等を提出する際には、書類の該当部分をマスキングして提出したり(例えば源泉徴収票の住所部分)、「非開示の希望に関する申出書」を添付して提出する必要があります。ただし、非開示とするか否かは最終的には裁判官の判断によりますので、絶対に相手方にみられたくない書類等はそもそも提出しない方が無難でしょう。

 

4.急いで結論を出してほしい - 審判前の保全処分

旧法では、審判前の保全処分の申立てをするには審判の申立てが前提とされていました。

新法では、夫婦間の協力扶助、婚姻費用の分担、子の監護、財産分与、親権者の指定又は変更等の処分に関する調停の申立てがあったときにも、審判前の保全処分の申立てが可能になりました。

例えば、離婚後の財産分与調停の途中で相手方が対象マンションを売却しようとする動きがあった場合、新たに審判の申立てをしたり、調停を不成立にして審判手続に移行させることを要せずに、直ちに審判前の保全処分の申立てをすることができます。

 

5.調停期日の進行について - 当事者同席での手続説明

これまでの離婚調停では、双方が顔を合わせることは少なく、申立人と相手方が交互に調停委員から事情を聴かれ、話し合いを進めていました。そして、調停が成立するか不成立になる場合に初めて、担当裁判官も交えて双方が顔を合わせ、手続を終結させることがほとんどでした。

新法では、調停手続きの透明性を確保することにも主眼を置いているため、裁判所では原則として、
1 まず双方同席の上で裁判所から手続の説明を行う
2 その後、申立人と相手方から交互に個別に事情を聴く
3 期日の終了時に、再度同席の上で、次回までに双方が準備すべきことの確認等を行う
ことが予定されています。

なお、DV等の問題があり同席が難しい場合は、その旨を進行に関する連絡表に記載したり、調停委員に申し出れば同席を避ける扱いとされています。

 

6.子どもの意向の尊重 - 手続への参加と手続代理人

新法では未成年者の意向を十分に把握するための規定が設けられました。

子どもの意向の十分な把握

養子縁組や親権者の指定、面会交流、未成年後見など子どもが影響を受ける手続については、裁判所は子どもの意向を把握するよう努め、審判の際には子どもの年齢や発達の程度に応じてその意思を尊重しなければならないとされました。

また、一定の事件においては15歳以上の子どもの陳述を聴取することが義務づけられています。

利害関係参加の制度

一定の事件においては、子どもは受動的に意思を確認されるだけでなく、両親等から独立して手続に参加することができるようになりました。すなわち、子どもは原則として調停や審判の手続をする能力(手続行為能力といいます。)はないとしつつ、面会交流や親権者の指定などでは、自らの申立てによりあるいは裁判所の職権で、調停や審判手続に参加し、主体的に意向を表明することができます。

もちろん、子どもにこのような手続を理解できるだけの能力(意思能力といいます。)があることが前提ですが、小学校の高学年程度に達していればおおむね問題ないとされています。

ただし、親が自分の有利になるように子どもを無理に参加させようとする場合も考えられるため、子どもの利益を害すると判断されれば手続への参加は認められません。

子どもの手続代理人の制度

たとえ手続に参加できるといっても、子どもが自分だけで十分に意思表明できるとは限りません。自分の意見を表明する上で相談し、悩みを共有してくれるパートナーが必要です。そこで、裁判所は必要な場合は弁護士を子どもの代理人に選任することができるようになりました(手続代理人の制度)。

手続代理人となった弁護士は、子どもとコミュニケーションをはかり、どうするのが本人の最善の利益にかなうかを考えつつ、両親や家庭裁判所調査官等との意見交換を通じて、本人の声を代弁することが求められます。

ところで、この制度の重大な問題点は、弁護士の報酬が子どもの負担とされていることです。事情によっては両親等に負担させることができるとはされていますが、子どもの負担を考慮して、裁判所が制度の利用に消極的にならざるをえないのではと危惧されています。弁護士会では弁護士の費用を援助する制度を設けていますが、本来は公費での負担とするべく法律を改正すべきとの意見を表明しています。

 

7.電話会議・テレビ会議システムの導入

当事者が遠隔地に居住しているとき等に、当事者の意見を聴いて電話会議又はテレビ会議システムを利用して調停や審判手続を行うことが可能になりました。

ただし、証拠調べについては電話会議によることはできません。また、テレビ会議についても民事訴訟法において可能な方法によってのみ利用できるとされています。

さらに、離婚及び離縁の調停において「調停を成立させる段階」で電話会議やテレビ会議を利用することは認められません。最後の段階では当事者双方が出席する必要があります。したがって、離婚や離縁が成立する前段階の調停期日においての利用にとどまると思われます。

これに関連してですが、離婚や離縁は身分行為の面があるため身分変動には代理はなじまず、成立させるには本人出頭が原則とされています。離婚訴訟でも、和解による離婚をする場合は弁護士だけでは足りず、原則として当事者本人の出頭が求められています。

上記システムを利用する場合、裁判所は通話者及び通話先の場所を確認しなければならず、手続の後に通話先の電話番号を記録に記載する扱いとされています。そこで、当該電話番号を相手に知られたくない場合には非開示申出書を提出する必要があります。

 

8.審判手続全般の改正

夫婦間の協力扶助、婚姻費用の分担、子の監護、財産分与、親権者の指定又は変更等の処分についての審判は、相手方当事者がいる事件であり、手続保障の見地から以下のような規定が設けられました。

イ 裁判所は原則として当事者の陳述を聴かなければなりません。陳述とは意見、意向のことであり、方法としては期日を設けて裁判官が尋ねる方法や、裁判所から当事者あてに書類を送って回答してもらう方法等があります。ただし、当事者が希望する場合は裁判官が直接陳述を聴く手続によらなければなりません。

ロ 調停から審判に移行しても、調停での事件記録は当然には審判の資料にはならず、裁判所が「事実の調査」という手続をすることで初めて審判の資料に利用することができます。

ハ 当事者に証拠調べの申立権が認められました。

ニ 審理の終結について、裁判所は原則として相当の期間をおいて終結する日を定めなければならず、その上で、審判をする日(審判書を裁判所から受け取れる日)を定めなければならないとされました。

旧法下では、審理が終わっても審判がいつ下されるのか分からず、ある日突然裁判所から書類が届いて知るのが実情でした。新法のもとでは、当事者がいつまでに証拠等を提出しなければならないかの期限や、審判の基礎となる裁判資料がどの範囲までのものかおのずと明らかになりますし、審判が出た後の対応を前もって準備しておくことも可能になります。

ホ 審判に対する不服申立手続きである即時抗告をするには、抗告状を提出する必要がありますが、申立書と同様に原則としてその写しが相手方当事者に送付されることとなりました。

ヘ 抗告審では、原則として抗告人以外の当事者の陳述を聴かなければならないとされました。

例えば、婚姻費用分担の審判に不満な当事者が即時抗告をした場合、旧法下ではある日突然高等裁判所から決定書が届いて結果を知るのが実情でしたが、新法のもとでは、即時抗告が不適法か理由がないことが明らかである場合を除き、必ず相手方当事者の意向を聞いた上で判断されることになります。

 

干支戌
1月。今年1年も平穏に過ごせますように。