民事賠償事件 - 事件性、因果関係等の争い

■事故により妊娠28週の被害者が出産。新生児は生後数時間で亡くなったが、死亡慰謝料、死亡逸失利益が認められたケース

【事案】交差点で青信号に従い直進した被害者車両と、対向車線から右折してきた相手方車両が交差点内で接触。被害者は自身が負傷したほか、当時妊娠28週で事故後に切迫早産のおそれがあったため、事故当日に帝王切開にて出産。しかし、子の容態が急変し、事故から数時間後に死亡。

裁判では、事故と早産及び死亡との因果関係を中心に争われ、当方からは、事故前は母子共に健康で早産の兆候がなかったことを診断書や母子健康手帳で明らかにするとともに、事故前と事故後の体調変化等について被害者の報告書等を提出したほか、同種事案について因果関係を認めた裁判例等も提出した。

判決では、亡くなった子の死亡慰謝料及び死亡による逸失利益について、当方の主張にほぼ近い金額が認定され、過失相殺を経て自賠責の既払金を除いて約600万円の支払いが命じられた。

【コメント】本件は、出産を心待ちにしていた被害者が事故により早期出産を余儀なくされ、出産後わずか数時間でお子さんを亡くされたという大変痛ましい事故でした。事故と死亡との因果関係が争われるであろうことは早い段階から分かりましたので、まずは自賠責(強制保険)に被害者請求の手続をして自賠責保険金を獲得し、その後に当方算定額との差額分を訴訟提起する方針で臨みました。

自賠責の実務においては、受傷と死亡との因果関係の有無の判断が困難な場合、死亡による損害について5割の減額がなされますが、本件では減額はなされていません。同種事案で因果関係を認めた裁判例や、医学文献等も提出し、因果関係認定の補強証拠としました。亡くなったお子さんに対する哀惜の思いが綴られた被害者の陳述書には、思わず涙するものがありました。

 

■一度成立した示談について、保険担当者の説明に問題があるとして争った結果、示談は無効として追加の賠償が認められたケース(併合10級)

【事案】被害者は運転中に相手方車両がセンターラインオーバーにて正面衝突し、胸骨骨折、頚椎捻挫、おや指骨折等により1か月半入院し、その後1年間通院。

後遺障害は当初非該当だったものの、ご自分で異議申立をした結果、10級7号(1手のおや指の用を廃したもの)、14級9号(局部に神経症状を残すもの)の併合10級に認定変更。その後、相手方保険の担当者から示談提示があり、被害者は「法律に定められた金額ならやむをえない」と伝えて示談に応じた。しかし、実際には示談額は自賠責保険の10級相当額(461万円)に過ぎず、後にそのことを知った被害者が抗議するも、相手保険会社は示談撤回に応じなかった。

訴訟では、示談状況に関する被害者の詳細な報告書を提出したほか、保険担当者の証人尋問が行われ、同人が事前に提出していた示談状況報告書の内容について、詳細に反対尋問を行った。その結果、裁判所より示談が無効であることを前提に、逸失利益については一部減額されたものの、総額1400万円を別途支払う内容の和解勧告がなされ、和解成立。

【コメント】被害者は後遺障害が当初非該当となったことに納得がゆかず、主治医に追加の診断書を求めたり、仕事上の不都合を詳細に記載した異議申立書を作成した結果、一転して後遺障害等級が認定されたものです。被害者の行動を見れば、納得のゆく賠償を求めているのは明らかですから、後遺障害等級に応じた逸失利益、慰謝料についてきちんと説明すべきは当然です。ところが、担当者はそのような説明ではなく自賠責保険の説明をしたにすぎず、それが法律上請求できる金額の上限であると被害者が誤解していることを知りながら、示談をさせたとの認定がなされました。

後遺障害の等級認定がなされても、保険会社の提示額が強制保険である自賠責の上限金額と同額であるケースは、比較的等級が下位の場合に散見されます。逸失利益、後遺障害慰謝料の提示額が妥当かどうか、専門の弁護士に一度相談されてから示談に応じることをお勧めします。

 

■2人乗りの原付バイクが塀に衝突し、1人が死亡。運転者は死亡者かどうかが争点。一審では死亡者遺族が敗訴したが、控訴審は運転者を相手方と判断、逆転勝訴したケース(判例タイムズ1163号掲載)

【事案】依頼者の子Aは、友人Bと原付バイクに2人乗りをして、左カーブを曲がりきれずにコンクリート塀に衝突する事故に遭い数日後に死亡、Bは負傷。依頼者は、運転者はBであるとしてBを相手に損害賠償請求訴訟を提起。Bは自分は運転していないと主張、どちらが運転者かが争点。

一審は、バイクと塀の損傷状況、バイクの右側面にコンクリート粉末が付着していたこと、現場道路のさっか痕等を総合すると、バイクはハンドルを左に傾けながらコンクリート塀に車体の右側面を衝突させたと認められる。Aの右半身にある線状のさっか痕は塀に衝突した際に受傷したものと認められる。Aの骨盤の打撲が左右のほぼ同じ位置にほぼ同じ形状であることから、バイクのハンドルに衝突してできたものと認められる。等を根拠にAが運転していたと認定し、請求棄却。依頼者は控訴。

控訴審は、さっか痕は事故後約1か月でわずかな痕跡しかなく、実況見分調書には車両のメインスタンドにさっか痕やコンクリート粉末の付着の記載がないことから、さっか痕はバイクのメインスタンドがアスファルト路面とさっかして生じたものではない。事故時のA、Bのくつの形状や靴底のさっか状況から、さっか痕はBの左靴底の物質が付着したものと推認される。Aの負傷部位に関する実況見分調書やカルテ等を見てもAに左右の骨盤打撲があったと断定できない。Bのカルテ等によるとBは腹部を打撲していると認められるとした。

その上で、Bの右大腿骨骨折は局所的に大きな力が加わった結果と推認されるが、これは車両前部の計器盤等への衝突以外にない。Aの着衣の下部には右側前面にのみさっか痕があるのに、Bのズボンは左右の前面から側面にかけてさっか痕がついており、両側のさっか痕が生じる原因は車両前部との接触以外にない。等を根拠に運転者はBと認定し、請求認容の逆転勝訴判決。

【コメント】依頼者はお子さんが被疑者として扱われ、被疑者死亡のまま捜査が終結したことに納得がゆかず、事故の真相を明らかにしたい、我が子の名誉を回復したいとの思いから、民事の裁判に踏み切りました。目撃証言もなく、実況見分調書や遺留品の写真等わずかな証拠を頼りに、同型式の原付バイクを取り寄せて事故の再現写真の報告書を作成したり、遠方の医師に依頼して医学鑑定を求めたりと、できうる限りの立証活動を展開しました。

依頼者は、本件訴訟とは別に県警等に対する損害賠償請求訴訟を別途、個人で提起し、ご自身で証人尋問等をこなされました。その結果、警察認定の前提ともなった医師の捜査回答書の信用性が否定されるなどして、本件訴訟でも有利に利用することができました。

非常に難しい裁判でしたが、依頼者は証拠を丹念に検討し、自ら進んで主張を裏付ける資料を集めるなど、訴訟遂行への努力を惜しみませんでした。依頼者の思いが結実した裁判として印象深いものがあります。

 

このように、交通事故の事案において弁護士が関与することで、まっとうな被害回復がなされることは、決してレアケースではないのです。


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