請求できる人身損害 - 休業損害・慰謝料・示談とは

Q 保険会社から「治療も終了したようですので、示談をしたい」との連絡がありました。示談とは何ですか。私は相手にどのような請求ができますか。

A 示談とは、あなたと加害者との間であなたの損害内容や損害額を確定し、最終的にあなたにいくらの賠償をいつまでに払うかについて合意することをいいます。

 

示談の意味

示談が成立すると、加害者はあなたに示談内容に従った賠償をしなければなりませんが、示談内容以外の支払には応ずる必要がなくなります。

通常は、加害者の保険会社からあなたの損害内容・損害額を計算し既に払った分(治療費等)を控除した計算書とともに、計算書の内容に沿った「承諾書(免責証書)」が示されます。これにあなたがサインし印鑑を押すと、示談成立となります。

 

なお、「示談書」を取り交わす場合には、あなたと加害者の双方がサインし印鑑を押す必要がありますが、「承諾書」はあなたから保険会社及び加害者への差入れの形式を取り、「保険会社からの保険金受領をもって加害者には一切請求しない」と承諾(免責)するため、あなたのサインと印鑑だけで足ります。

 

一度成立した示談の内容を後で争うのは極めて困難ですので、承諾書にサインする前にはその内容をよく確認し、疑問点は保険会社に説明を求め、更には交通事故に詳しい弁護士に相談してアドバイスを求めることが必要といえます。

あなたが加害者に請求できる主な損害内容は、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料が考えられます。

もしも入院していたのであれば、入院雑費や、家族の付添看護費等も認められる場合があります。

 

 

Q 買い物帰りに事故に遭い、2か月ほど通院しました。事故当時は子育てのために仕事をしていなかったのですが、子どもの面倒を見ながらの通院はとても大変でした。仕事をしていなければ休業損害は認められないのでしょうか。

A 家事労働者としての休業損害を主張できる可能性があります。

 

家事労働の損害

あなたは事故当時収入を得る仕事はしていませんが、家事労働をされています。受傷によって家事に従事することができなかった期間については、休業損害を請求できるとされています。これは、家事労働も第三者に頼めば一定の費用がかかるため、家事労働を金銭的利益に見積もって損害として評価することが可能だからです。

具体的には、1日当たりの収入額を認定した上で、治療期間総日数のうち、家事労働に影響があった日数を乗じて計算します。保険会社は自賠責の基準である1日当たり5700円に、通院日数を乗じて計算することが多いです。

 

他方、裁判所の基準では、統計上の全女性労働者の平均賃金を元にすることが多く、1日当たり1万円近くになることがあります。ただし、家事労働に影響があった日数は厳格に判断されることが多く、事故から日が経つにつれて影響が少なくなってゆくとみて、段階的に減額されることが多いようです。

詳細は弁護士にお尋ねください。

 

 

Q 小学1年の息子が事故に遭いました。2週間の入院中、妻は仕事を休んで毎日病院に付添に行き、現在も通院の際は仕事を早退して付き添っています。妻が仕事を休んだこと等による収入の減少は請求できますか。

A 近親者の付添看護費として、加害者に請求することが考えられます。

 

近親者の付添看護費

事故の被害者の入院や通院の際に近親者が付き添って看護することがありますが、付添の必要があれば、その費用も相当な限度で被害者本人の損害として請求することが認められています。

「近親者の付添は肉親の情愛としてするのだから、損害になるのか」という議論もかつてありましたが、近親者が身の回りの世話をして労務の提供をしている以上、これを金銭的に評価することは可能ですし、治療上の必要性があれば損害として認めるのが裁判所の立場です。

通常、医師の指示があれば付添の必要性は認められます。また、被害者の症状の程度(危篤状態、骨折などで身体の自由がきかない状態等)や、年齢(幼児や児童、高齢者)等から付添の必要性が認めれらるケースも多いです。

 

付添看護費は、1日当たりの金額をもとに付添の日数を乗じて算定するのが基本です。裁判所の基準(赤本)ですと、入院1日6500円、通院1日3300円とされていますが、近親者が仕事を休んだ場合、休業損害を基準に計算される場合もあります。

さらに、近親者が遠方に住んでいて、付添のためにホテル等に滞在しなければならなくなった場合等は、一定の滞在宿泊費用も請求できる場合があります。

 

あなたの場合、お子さんの年齢を考えると妻の付添看護費を請求できることに問題はないといえるでしょう。妻の休業損害を計算の上、上記の近親者付添費の額とを比較して高い方を請求することをご検討ください。

 

 

Q トラックに追突され、首や腰の痛みがひどく1か月ほど入院の後、自宅安静のために3か月ほど仕事を休みました。有給の未消化30日分を使いましたが、それ以外は給与支給はゼロです。欠勤により賞与の算定に響くことも確実です。有給使用分も含めて損害を請求できますか。賞与の減額分はどうですか。

A いずれも休業損害として請求可能です。

 

有給休暇の損害

休業損害とは、事故による傷害のため就労ができない、あるいは不十分な就労を余儀なくされたことによる収入の減少をいいます。事故前と比べて現実に発生した収入減を見積り、加害者に請求することは当然の権利といえます。

サラリーマン等の給与所得者の場合、1日当たりの収入額(収入日額)を算定し、治療期間の限度内で相当な休業日数を認定して乗じることで計算します。収入日額は事故前3か月の平均賃金をもとに算定するのが通常ですが、繁閑のある仕事では年収ベースで算定する場合もあります。

算定に際しては基本給、能率給のほかに各種の手当(住宅手当、通勤手当、皆勤手当等)も含めます。事故による欠勤の影響で賞与が減額になる場合、減額分も損害として請求することが認められています。

計算の際はいわゆる手取額ではなく税込み額が基準です。

 

ところで、年次有給休暇を利用した場合、見かけ上の収入減少がないので損害とは認められないのではないかという問題があります。

これについては、有給休暇は労働者の権利であるのに、事故後の治療等のために不本意に権利行使せざるをえなかったのだから、損害として請求しうる(加害者に利得させない)という裁判例が多いといえます。

 

なお、保険会社に請求する場合は所定の「休業損害証明書」と、前年度分の源泉徴収票の提出を求められるのが一般です。証明書は雇用主に休業等を証明してもらうものですので、勤務先に前もって話を通しておくことをお勧めします。

 

 

Q 追突事故に遭い、3か月ほど通院しました。事故前は派遣社員として働いていた時期もありましたが、事故当時は仕事がなく、次の派遣先が決まるまで自宅待機中でした。仕事をしていないと休業損害は認められないのでしょうか。

A 一定の限度で休業損害が認められると考えます。

 

失業者と休業損害

休業損害は事故がなければ得られたであろう収入を損害として認定するものですから、失業者には原則として休業損害は認められません。

ただし、失業中ではあっても就職が内定しているなど、近い将来就労による収入が見込まれる場合は、就職予定日から治療が終わって実際に就労可能となる日までに得られるはずの収入は、事故がなければ得られたであろう収入にほかなりませんので、休業損害として認められることになります。

また、具体的な就職予定がなくても働く意欲や能力があり、近い将来仕事に就く可能性が高い場合には、一定の限度で休業損害を認める裁判例が多いです。

治療期間が長くなれば、失業者といえどもその間何らかの仕事に就いて収入を得ているはずだと考えれば、合理的な判断といえます。

 

問題は休業損害の収入額、期間をどう見積もるかです。これは個別具体的な事情に基づいて判断するとしかいえません。

期間については、事故時から治療終了時(症状固定時)までとする裁判例が多いようですが、実際の治療日数に限定する裁判例もあります。

収入額については、再就職によって得られるであろう収入を基礎とすべきとは一応言えそうですが、多くの場合失業前の収入が参考にされているようです。

 

あなたのケースでは、新たな派遣に備えて自宅待機中であったとのことですから、働く意欲や能力の面でも休業損害が認められてしかるべきです。その場合、最大3か月間の休業損害が認められる可能性がありますが、収入については事故前の派遣時の収入が参考にされるものと思われます。

 

 

Q 夫が事故に遭い、下半身がマヒして車椅子生活となりました。自宅玄関のスロープや室内の手すり、風呂場を改造するなどのバリアフリー工事を行ったり、車椅子、車椅子昇降用リフト付きの車に買い換えたのですが、これらの費用を請求できますか。

A 必要性、相当性が認められれば加害者に請求できます。

 

家屋改造費等の損害

事故によって後遺症が残り、日常生活に支障を来す場合、これをできるだけ回避すべく住宅のバリアフリー工事を行うことは必要な手当といえるでしょう。裁判例でも家の出入口、浴室やトイレ等の改造費のみならず、ホームエレベーターの設置費用を認めたり、重度の後遺症で自宅の改造だけでは十分に介護できない事情がある場合に、新築費用のうち障害者仕様にしたことに伴う工事代金増額分を損害と認定したケースもあります。

ただ、自宅の改造ではご本人以外の家族も利便性を得ているので、その分を差し引くべきではないかとの指摘がなされることがあります。

確かにそのような面があることは否定できませんが、だからといって被害者が不便な生活を強いられる理由にはなりません。要は程度問題であり、明らかに家族の利便性の方が大きい場合や、不相当にグレードの高い仕様の場合などは、裁判例でも一部しか請求が認められない場合が多いようです。

 

また、障害者仕様の車両購入費については、標準仕様車両との差額分を損害として認められるケースが多いです。自動車は後遺症とは無関係に購入されることも多く、被害者以外の家族の利便性が大きいことが考慮されています。

なお、車両や車椅子など将来にわたって必要となるものについては、「買い換え費用」も含めて請求することができます。

この場合、耐用年数を考慮して平均余命までの買い換えを前提に算定することが多いですが、中間利息を控除して現在価値を算定する必要があります(詳しくは、後遺症の逸失利益の項をご参照ください)。

 

 

Q 保険会社から示談の提示がありましたが、慰謝料という項目に「入通院期間を考慮し○○万円」とありました。そもそも慰謝料とは何ですか。入通院期間によって金額が変わるものなのですか。

A 慰謝料(いしゃりょう)とは、精神的苦痛に対する損害を金銭で見積もったものです。

 

慰謝料とは

交通事故に限らず、暴力被害を受けたり名誉を傷つけられるなど、違法行為によって精神的苦痛を受けた場合一般に、財産的損害とは別に相手方に対して請求できる権利として認められています。

交通事故により負傷し、治療費が発生したり、仕事を休まざるをえなくなって休業損害が発生するなど財産的な被害を被るだけでなく、恐怖を感じ、痛い思いをし、治療中も苦痛はずっと続きます。仕事を休むことで同僚や上司に迷惑を掛けたり、家族にも心配を掛けていると思い悩むことでしょう。

そのような精神的苦痛一切を慰謝料として見積もり、損害として請求することができるのです。

 

ところで、同じような事故に遭っても「もうだめだ」と思い悩む方もいれば、「たいしたことは無い」と気にしない方もいます。本来、精神的苦痛をお金に見積もる作業は人によって千差万別ともいえます。

しかし、交通事故は毎日至る所で発生しています。平成28年中の全国の人身交通事故発生件数は49万9,201件で、これによる死者数は3,904人、負傷者数は61万8,853人とのことですが(内閣府の平成29年版交通安全白書)、単純計算で1.05分に1件の人身交通事故が発生していることになります。

このような多数の事故を前に、何らの基準もなく人によって一から慰謝料を見積もっていたのでは金額がばらばらになって不公平になりますし、迅速な賠償が遠のきます。

かといって、「怪我をしたら慰謝料は一律○○万円」とするのも、打撲で数回の通院で完治した被害者と、頭蓋骨骨折で意識不明の重体が続いた被害者とを同じに扱うことになり、不合理といえます。

 

そこで、入院期間や通院期間を基準とした慰謝料の算定表が作成され、公表されています。

そして、実務では、入通院期間に見合う表の慰謝料額を基準としつつ、傷害の程度等を考慮して増額、減額の修正を検討しています。

 

 


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