成年後見人の権限ではないもの

後見人の権限ではないもの

次の行為は、後見人の権限ではありません。

身分上の行為

婚姻、離婚、認知、養子縁組、遺言等のいわゆる身分行為については、後見人が代理して行うことはできません。これらの行為は本人の意思決定によるべきであり、そのような行為をすることの判断能力(意思能力)さえあれば行うことができるとされています。

 

医療上の同意

本人に医療を受けさせるために病院等と診療契約を結ぶことは後見人の権限ですが、手術などの医的侵襲行為をうけるときには同意書を求められます。この同意の意味は、身体に対する侵襲を伴う医療行為の違法行為を失わせるものとの理解が一般です。

このような同意は本来、本人の自己決定権に基づくものですから、本人以外が同意できる性質のものではありません。しかし、身寄りのないケースなどでは後見人に同意を求められる場合もあります。

ぎりぎりの判断として後見人の立場で同意書にサインすることもありますが、本来的には法の不備であり、立法的な解決が強く望まれます。

 

郵便物の閲覧

本人あての郵便物を後見人が勝手に開披したり、後見人あてに回送するよう郵便局に届出たりすることはできません。憲法によって保障された通信の秘密を侵害することになるからです。

他方で、本人の財産状況を調査、把握するためには本人宛の証券会社や銀行からの満期保険金、定期預金等の案内を確認する必要があるのに、本人や本人の親族からの協力を得られない場合もあります。

そこで、平成28年の法改正により、家庭裁判所は後見人の申立により必要があると認めるときは、6か月以内の期間を定めて本人宛の郵便物、民間事業者の信書便物を後見人に配達するよう郵便局等に嘱託できる制度が定められました。なお、保佐人、補助人には認められません。

家庭裁判所の決定を受けて、後見人は受け取った郵便物等を開披して内容を確認することができますが、後見人の事務に関係のないものは速やかに本人に交付しなければなりません。また、関係のあるものについても本人から閲覧の求めがあれば、応じなければなりません。

 

いわゆる死後の事務

本人が亡くなると後見自体が終了します。また亡くなった時点から相続が発生しますので、後見人が管理している財産については相続人に引き継ぐことになります。

したがって、死後の財産管理や処分は相続人がなすべき事柄であり、葬儀、火葬、入院代や施設入所費用の精算等は後見人の職務ではありません。

しかし、本人に身寄りがない場合や、相続人が遠方にいたり入院している場合などではやむを得ず後見人が対処しなければならないケースもあります。このような場合、これまでは後見人の応急処分義務や相続人のための事務管理として対応していました。私も実際、本人の入院先での臨終立会い、葬儀の手配、病院の退去精算、火葬立会いと納骨の手配、永代供養等を行ったことがあります。

平成28年の法改正により、本人死亡後の成年後見人の権限として、相続人が財産管理をできるに至るまで、相続財産に属する特定の財産の保存行為、弁済期が到来している相続財産に属する債務の弁済ができることが明記されました。

また、死体の火葬・埋葬に関する契約の締結や、その他の保存行為ができることも明記されましたが、実施には家庭裁判所の許可が必要になります。たとえば、裁判所の許可を得て本人名義の預金口座から預金の払い戻しを行い、病院代の精算を行うことも可能になります。ただし、相続人の意思に反することが明らかな場合はできません。また、保佐人、補助人には認められません。

なお、死亡の届出については、戸籍法上後見人、保佐人、補助人及び任意後見人もできるとされています。