物損事故に特有の問題 - 全損、評価損、休車損害等

Q センターラインオーバーの車に衝突されました。納車して数か月の新車なのに、センターピラーが曲がり、ドア交換も必要でかなりの修理費用がかかりそうです。相手の保険会社に「新車に買い換えて欲しい」と要求しましたが断られました。私の要求は認められないのですか。請求できる車の損害にはどのようなものがありますか。慰謝料は請求できますか。

A 残念ですが、新車に買い換えることを要求することはできません。

 

金銭賠償の原則

日本の法律では、損害賠償については金銭で評価し賠償することが原則とされています。たとえ「同一車種、同一年式、同程度の車を買ってほしい」という要求であっても、認められることはありません。

慰謝料についても、物損事故では修理代などの財産上の損害が賠償されることで精神的な苦痛も慰謝されるので、損害としては認められないとするのが裁判所の立場です。

 

事故に遭ったときの車の損害としては、修理費用、買換の諸費用、代車料、評価損などがあります。順に見ていきましょう。

 

1 修理費用

車の修理が可能であれば修理費用を損害として請求できます。

ただし、中古車の場合は注意が必要です。修理費用が車両の時価に買換諸費用(後記)を加えた額よりも大きい場合、原則としてその限度までしか損害として認められません。

車両の価値以上のお金をかけて修理することは合理性を欠き、損害とは評価しないというのが裁判所の考え方です(このような場合を一般に、経済的全損といいます)。

 

2 買換の諸費用(全損時)

経済的全損や、そもそも修理不可能の場合(物理的全損といいます)に、買換のために必要になった登録、車庫証明、廃車の法定の手数料相当分や、ディーラー報酬部分のうちの相当額、自動車取得税、車両本体価格に対する消費税相当額、事故車両の自動車重量税の未経過部分(ただし還付された部分は除く)も、裁判所は損害として認めています。

ただし、被害車両が中古車なのに新車に買い換えても、新車の登録諸費用が認められるわけではありません。

あくまで被害車両と同一車種・年式・型、同程度の使用状態の自動車を中古車市場で取得する場合の諸費用の限度でしか認められません。

自動車取得税は通常、取得価額が50万円以下の場合には課税されませんのでご注意ください。

他方、自動車税や自賠責保険料は事故車両について還付を受けることができるため、損害とは認められません。

 

3 代車料

車を修理に出している間や買換の期間中、代車を使用することもあるでしょう。代車を使用する必要があり、かつ現実に代車を使用した場合には、相当な期間に限って代車料も損害として認められます。

代車の種類(グレード)としては、事故車と同種、同年式のものが通常認められていますが、事故車が高級外車の場合、国産高級車の限度で認める裁判例が多いです。

 

4 評価損

修理をしても技術上の限界から外観や機能に欠陥を生じることがあります。また、事故歴によって車両価値の下落が見込まれる場合もあります。

事故当時と修理後の車両の評価額に差額が生じる場合、その差額(下落分)のことを評価損(格落ち損)といいます。

評価損について、保険会社は損害として認めることに消極的ですが、裁判所は一定程度認める傾向にあります。

 

どのような場合に認められるかはケースバイケースですが、もともとの車両価格が高いケース(高級外車等)、新車登録から日が浅く走行距離も比較的少ないケース、損傷の程度が構造部分にまで及んでいるケースなどで、修理費用に対する一定割合(例えば1~3割)をもって認める例が比較的多いようです。

 

あなたのケースでは、新車登録から数か月と比較的新しいのにセンターピラーが曲がるなどの大がかりな修理が必要ですので、評価損が認められる余地は十分あるでしょう。

具体的には、修理後の車両の価値について、(一財)日本自動車査定協会にて事故減価証明書を取得するなどして、査定が下がっている事実を具体的に指摘し、交渉することが必要となります。

 

 

Q 貨物運送業を経営しています。従業員が事故に遭い、貨物自動車を修理に出したところ納車まで1か月かかり、この間遊休車両もないため注文が減り、売上に響きました。事故の相手方に売上の補償を求めることはできますか。

A 一定の金額を休車損害として相手方に請求することが可能です。

 

休車損害とは

事故のために営業車を使用することができなかった期間に得られたであろう営業利益を、休車損害といいます。

営業車(緑ナンバー等)の場合、他の自動車を無許可で代替して使用することは法律上許されないため、当該車両が使用できない期間は営業による利益が上げられません。そこで、使用できない期間の営業利益を補償する必要があるとされており、貨物運送業以外にもタクシー、路線バス等が事故に遭った場合にも問題になります。

ただし、遊休車両を利用できる場合には休車損害は認められません。

 

休車損害の算定方法としては、1日当たりの損害額に相当な休車期間を乗じて計算するのが一般的です。

ここで、1日当たりの損害額をどう計算するかが問題になります。

事故前数か月の売り上げ実績を単純に日数で割るわけにはいきません。休車することによって支出を免れた経費を売上から差し引く必要があるからです。

具体的には、燃料代、高速代金等の変動経費は控除すべきでしょう。人件費についても、休車中も支出を免れない固定部分は控除できないでしょうが、乗務手当等の変動部分は支出を免れるでしょうから控除すべきと思われます。

 

相当な休車期間としては、修理期間か、買換の場合には緑ナンバーの取得も含めた新規購入車両の納入期間になるでしょう。

 

 


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