民事賠償事件 - 後遺症全般

■膝関節骨折後の不整癒合の後遺症について、逸失利益は5年ないし10年との相手保険の主張を排斥し、67歳までの44年間分を認めたケース(12級13号)

【事案】被害者は事故当時大学生で、知人運転の車に同乗中に事故に遭い、膝関節脱臼骨折、膝半月板損傷等により膝にプレートを入れる緊急手術を受けた。リハビリを続けて事故から1年半後にプレートと半月板を取り除く手術を受け、事故から2年後に症状固定。後遺障害は12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)の認定。

相手保険は、逸失利益について労働能力喪失期間を5~10年、大卒20~24歳の平均年収を基に算定して示談額を提示したため、被害者は納得がゆかず弁護士に相談。

訴訟では、当方から主治医に後遺症についての追加意見書の作成を依頼したほか、就職先で膝にどのように負担があるかを示す写真撮影報告書、日常生活における支障を詳細に説明した陳述書を提出するとともに、詳細な本人尋問を行った。

その結果、裁判所より、膝関節骨折後の不整癒合は将来にわたって残存することから神経症状も将来にわたって継続するとの判断のもとに、67歳まで44年間にわたって賃金センサスの男性労働者の全年齢平均賃金を基礎とする逸失利益を認定した和解案が提示され、和解成立。

【コメント】後遺症による逸失利益の算定期間(労働能力喪失期間)については、いわゆるむち打ち症(頚椎捻挫等)の場合に、12級で5年~10年、14級で5年以下に制限する裁判例が多く見られるところです。ところが、往々にしてむち打ち症以外の原因による神経症状で12級、14級に該当するケースでも、むち打ち症と同様に喪失期間を制限する主張が相手保険からなされることがあります。

本件訴訟でも、相手方は被害者が日常生活には支障はなく、深屈曲時に痛みがあるにすぎないので、実質的な後遺障害は14級9号程度であり、筋力向上によって症状の改善が見込まれるから喪失期間は5年ないし10年程度であると主張しました。

しかし、被害者は膝関節の脱臼骨折によりプレートを入れる手術をした後、つらいリハビリに耐えてようやくプレート抜釘、半月板除去術を経たものの、主治医からは受傷前のスポーツができるような状態には戻らない、一生何らかの症状は残存するとの指摘を受けていました。神経症状の残存を理由に後遺障害の等級認定がされたとしても、その原因は膝関節の不整癒合という一生残存する原因に由来するのですから、労働能力喪失期間をむち打ち症と同列に制限することはできないといえます。

 

 

■自転車による歩行者への追突事故で、右手関節の機能障害、右肩関節の機能障害を認定し、裁判所基準にもとづく11級相当の後遺症慰謝料を認めたケース

【事案】被害者は70代の女性で、歩道上で後方から自転車に衝突されて路上に転倒し、右手関節の骨折、眼窩底骨折等の傷害を負って3か月以上入院した。その後、転院して通院治療を続けていたが、右肩の痛みがなかなか引かないため転医してMRI検査を受けたところ、右肩の腱板断裂が判明した。縫合手術を受けたものの、右手関節の機能障害、右肩関節の機能障害が残ったため、11級相当の後遺症を前提として訴訟を提起。

訴訟では、相手方は右肩の腱板断裂について、当初入院した病院の救急処置記録上、上肢は左右ともに挙上可能と記載されていること、事故から10か月が経過して初めて診断されたこと等から、事故後に何らかの理由によって発生したものであり、右肩の可動域制限は事故との因果関係がないと主張。

当方からは、当初入院した病院の診療録及び看護記録を提出し、事故から2日後の看護記録上、被害者が右肩が挙がらなくなったことを訴え、看護師が自力挙上ができないことを確認して主治医にその旨伝えたものの、CTやレントゲン撮影がなされているので経過観察のままとされたこと、救急処置記録上も右肩を打撲している記載があること等を指摘して、右肩の腱板断裂は本件事故により生じたものであり、右肩の可動域制限は本件事故によるものであると主張。

その結果、裁判所より、右肩の腱板断裂は本件事故により生じたものであることを前提に、1上肢の3大関節中の2関節の機能に障害を残すものとして、11級相当の後遺症慰謝料を前提とする和解案が示され、和解成立。

【コメント】本件は右肩の可動域制限の原因となった腱板断裂について、事故との因果関係があるかどうかが争われました。肩の腱板断裂は、外傷によって生じる場合もあれば、腱板の老化によって日常生活動作の中で生じる場合もあり、事故との因果関係を確定診断するにはMRI検査が必要とされます。本件では、当初入院した病院において肩のMRIが施行されていなかったため、これに代えて、看護記録等を丹念に検討し、詳細な主張をせざるを得ませんでした。

また、本件は「自転車事故」であり、自動車事故のように調査事務所による後遺障害の認定手続を経ることができないため、主治医の後遺障害診断書の検査結果(可動域測定)を元に、労災の認定基準をふまえて後遺障害の主張を展開せざるを得ませんでした。仮に、右手関節の機能障害だけが後遺障害として認定される場合、12級相当に止まりますが、右肩関節の機能障害も認定されますと、2つあわせて11級に相当します。

裁判所基準の慰謝料は後遺障害12級が290万円、11級が420万円で、130万円もの差があります。労災の認定基準を詳解した「障害認定必携」を熟読し、漏れがないかを検討する必要性を痛感させられました。

 

 

■保険会社の素因減額の主張を撤回させ、大幅増額にて示談したケース(14級9号)

【事案】被害者は車両どおしの交差点出合い頭事故により、外傷性椎間板ヘルニア、膝関節挫傷を受傷し入院約半月、通院約7か月の後、後遺障害等級14級9号(局部に神経症状を残すもの)の認定。

相手方保険より被害者に対し、膝の痛みは被害者の膝の形態異常が原因であり、素因が大部分を占めると考えられるので、既払金(治療費、休業損害)を除いて75万円(自賠責の14級限度額)しか支払えないとの提示。

弁護士が14級を前提に後遺症逸失利益及び慰謝料を算定し、素因主張が根拠のないことを指摘して交渉した結果、相手方保険は素因主張を撤回。既払金を除いて200万円を支払う内容にて示談成立。

【コメント】相手方保険は被害者に対し、なぜ素因での減額となるのかについて、納得のゆく説明をほとんど行っていませんでした。事故前から被害者がお持ちの心因的な要因や体質的要因(既往の疾患等)を「素因、そいん」といい、それが損害の拡大に寄与している場合には、裁判でも一定の割合で損害が減額されることがあります。しかし、これが保険会社によって安易に主張されるケースがあります。

安易に素因減額が認められると、少しでも持病がある被害者はまっとうな被害弁償を受けられなくなってしまいます。裁判では素因減額の主張はそう簡単には認められませんし、認められる場合でも大幅な減額はまれです。疑問に思ったら、専門の弁護士に相談するべきでしょう。

 

このように、交通事故の事案において弁護士が関与することで、まっとうな被害回復がなされることは、決してレアケースではないのです。


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